退職者のアカウントを放置するリスクと、当日までにやる手順
社員が退職したあと、メールやクラウドサービスのアカウントがそのまま残っていないでしょうか。アカウントの放置は、情報漏えいや不正アクセスにつながります。さらに、ライセンス費用の無駄や、取引先への説明がつかない状態も生みます。退職日までに何を、どの順番でやるかをあらかじめ決めておけば、担当者が変わっても同じ品質で対応できます。この記事では、放置で起きること、退職日までのチェックリスト、Microsoft 365 での考え方を説明します。あわせて、台帳があると楽になる理由も紹介します。
放置すると何が起きるか
退職者のアカウントが残っていると、次のようなことが起きます。
- 本人が退職後も、社内のメールやファイルを見られる状態が続く
- パスワードが外部に漏れていた場合、第三者が使っても誰も気づかない
- 退職者宛てのメールが誰にも読まれず、取引先からの連絡を見落とす
- 使われていないライセンスの費用を払い続ける
- 退職者が所有者だった共有フォルダーやチームが、整理されないまま残る
特に注意したいのは、二つ目です。使われていないアカウントは、普段からログインがないため、不正に使われても異変に気づきにくい性質があります。取引先のセキュリティチェックシートで「退職者のアカウントは速やかに停止していますか」と聞かれるのは、このためです。
退職日までのチェックリスト
退職の連絡を受けたら、次の五つの観点で確認を進めます。会社の規模によって項目は増減しますが、観点そのものは変わりません。
端末の回収
- 会社から貸与したパソコン、スマートフォン、タブレット
- USBメモリや外付けディスクなどの記録媒体
- 私物端末を業務に使っていた場合は、業務データとアプリの削除
アカウントの停止
- メールと Microsoft 365 や Google Workspace のアカウント
- 会計、勤怠、販売管理、チャットなどの各クラウドサービス
- VPN や社内ネットワーク、Wi-Fi への接続
- 会社の SNS や外部サイトの共有アカウント(パスワードの変更)
- 管理者権限を持っていた場合は、他の人への引き継ぎ
共有データの引き継ぎ
- 個人のドライブに置かれていた業務ファイルの移動先
- メールの転送先や、受信を続ける必要の有無
- 本人が所有者になっているチーム、サイト、共有リンクの所有者変更
- 予定表や連絡先のうち、業務上必要なもの
サービス契約・支払い
- 本人名義で契約していたサービスやドメイン
- 本人のメールアドレスで登録されていたサービスの連絡先変更
- 会社のクレジットカードや口座振替の登録先に、本人が担当者として登録されていないか
鍵・入退室
- 物理的な鍵、入退室カード、社員証
- 暗証番号で開く扉や金庫がある場合は、番号の変更
アカウントを止めるタイミングは、最終出社日の業務終了後か、退職日の翌日かを、人事担当者と事前に決めておきます。本人が引き継ぎ資料を作成している途中で止めてしまうと、かえって業務に支障が出ます。
Microsoft 365 での考え方
Microsoft 365 を使っている会社では、「削除」の前に「停止」を置くのが基本です。具体的には、次の順番で進めます。
- アカウントのサインインをブロックし、本人がログインできない状態にする
- 管理者の役割が付いていれば外す
- メールボックスは、上司など引き継ぐ人に一定期間アクセスできるようにするか、共有メールボックスへ切り替える
- OneDrive のファイルは、引き継ぐ人に一定期間のアクセス権を付け、必要なものを部署の SharePoint へ移す
- 本人が所有者だった Teams のチームや SharePoint サイトは、所有者を変更する
- ライセンスを外し、必要な引き継ぎが終わったあとに、アカウントを削除する
削除後にデータがどのくらいの期間残るか、どの操作で復元できるかは、プランや設定によって異なります。手順や期間の詳細は、公式ドキュメントで最新情報を確認してください。
避けたいのは、「退職者のアカウントを別の社員がそのまま使い続ける」運用です。誰が操作したか分からなくなり、記録の意味がなくなります。こうしたアカウントの停止や所有者の変更、ライセンスの付け替えは、Microsoft 365 導入・運用支援でも日常的に行っている作業です。
台帳があると楽になる理由
退職の連絡を受けてから「この人は何を持っていて、どのサービスにアクセスできたか」を調べ始めると、漏れが出やすくなります。本人に聞いても、本人も覚えていないことがあります。
これを防ぐのが、入社時から管理する台帳です。入社のときに、貸与した端末、作成したアカウント、付与した権限、渡した鍵を一人一行で記録しておきます。退職のときは、その行を見ながら一つずつ回収と停止を進め、完了日と担当者を書き込むだけで済みます。
台帳は、表計算ソフトで十分です。項目は、氏名、部署、端末、アカウントの一覧、管理者権限の有無、物品、付与日、回収日、担当者の程度から始めてください。この台帳は、取引先のチェックシートで「退職者の対応手順」や「端末の管理」を聞かれたときの根拠にもなります。
入退社のたびに台帳を更新し、年に一度は実態と照らし合わせる。こうした地味な作業を定例で続ける支援は、情シス顧問の役割の一つです。
よくある質問
退職日の何日前から準備を始めればよいですか?
退職の連絡を受けた時点で、台帳をもとに対象の一覧を作り始めることをおすすめします。アカウントの停止そのものは最終日に行いますが、所有者の変更やデータの移動先の確認には、本人との相談が必要なことが多いためです。
退職者のメールアドレスは、いつまで残しておくべきですか?
取引先からの連絡が続く間は、転送や共有メールボックスの形で受信を続ける会社が多いです。期間は業務の内容に応じて決め、台帳に「いつ削除するか」を書いておくと、放置を防げます。
急な退職や、本人と連絡がつかない場合はどうすればよいですか?
まずアカウントのサインインをブロックし、管理者権限を外します。端末や鍵の回収は人事と相談しながら進め、本人が所有者だったデータは管理者権限で引き継ぎます。こうした場面でも、台帳があれば対象の漏れを防げます。
まとめ
退職者のアカウントの放置は、情報漏えいや不正アクセス、連絡の見落とし、費用の無駄につながります。退職日までに、端末の回収、アカウントの停止、共有データの引き継ぎ、サービス契約、鍵と入退室の五つの観点で確認します。Microsoft 365 では「停止してから削除」の順で進めます。入社時から台帳で管理しておけば、退職時はその行を消していくだけで済み、担当者が変わっても同じ品質で対応できます。手順が決まっていない状態からでも、ご相談いただけます。
